二十年後のクリスマスイブ
「これから、どうするの?…桐人さんなら何でも出来そうだけどね」

 真由美には、煩くしか感じないエンジン音が響く中、耳を塞ぐ仕草をしながら桐人に尋ねた。

「………」

 桐人は、言葉こそ出さなかったが表情は明るかった。

「前に、お店で飲み過ぎて具合が悪くなった人が居た時、とっさに桐人さんがスーツを脱いで吐いたものを受けたのを目の当たりにした時、私や他のお客さんも言葉を無くしちゃったけど、あんな事が出来るのは桐人さんだけだと思う…優しいんだよね、本当に人に対して…『人が大好きなんだよ、何よりね!』って隣のホストさんが言ってて私は、その時、嫉妬するだけだったけど、今は言ってた事、判った気がする…本当に桐人さん有難う…素敵な時間を戴きました。きっと忘れないから…ずっと」



 終わりの筈だった…
しかし、運命は違っていた。

 桐人は腹を括った。

「出掛けよう…律子が待っている!」

 引き出しに仕舞って置いた小箱をジーンズのポケットにねじ込むと桐人は、部屋から出た。


「運命というものを今日ほど恨む事は無いかも知れないな…」

 桐人の素直な気持ちだった。
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