二十年後のクリスマスイブ
 律子の言葉が止まった。それが別離のきっかけであり、自分の弱さが桐人に別の縁を作らせてしまった事に気が付いたからだった。

「何が在ったのかは私は知らないが、律ちゃんと桐人は本当にお似合の二人だよ…世の中には色々な運と縁があるが、君達は誰もが羨むような輝きがあって多くの人々に元気を与えてると思うのだが……今の桐人は見る影も無い位落ち込んでいるのは律ちゃんが居なくなってからなんだから早く仲直りしたところをみたいものだね…もうすぐ用事を済ませて顔を出すだろ」

「………」

 新井の言葉に表情を少し緩めた律子だったが黙って人通りの無くなったクリスマスイブの表を眺めながら、悪戯で残酷な運命が近い事を律子は感じていた。少ない確率の期待を持ちながらも…



 ドアの鐘が力無く響いた。営業はとっくに終わっている“南風”のドアに律子と新井の視線が集中した。

「………」

 そこに末椅子桐人が現れ、律子を見つけると今迄に見せた事の無い思い詰めた表情で律子と新井の待つテーブル席へと近付いて来た。

「やっと、来たか!…いつものを煎れよう…」

 新井は、そう言うと今迄、掛けていた席を桐人に譲り、肩を叩いてカウンターに戻った
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