二十年後のクリスマスイブ
「さっきは、済まなかった………元気かい?2か月ぶりかな…」

 平静を装いながらも最愛の律子を目の前にして、取り敢えずは挨拶を交わすのが精一杯で、身体を凍らすような汗が腋から一筋、腕を流れた。

「メリークリスマス桐人…見ての通り私は元気よ。桐人は又痩せた?只でさえ細いのに…」

「そう、クリスマスイブみたいだな今日…」

「もう直ぐクリスマスになっちゃうけど…それと…」

 律子が、まだ話し終えない内に桐人は虚ろに呟いた。

「時間が経つのが早いな…今日は………」

 桐人は、そう言うと新井の体温の残る椅子に腰を下ろしたが、視線を律子に合わせないように俯いたまま固まってしまった。

「何があったの?…」

 桐人の只ならぬ雰囲気に心配そうに恐る恐る律子が尋ねた。

「今日は、俺も渡したい物があった…不思議なものだな?」

 おもむろに桐人は立ち上がるとジーンズのポケットから、さっき突っ込んだ小箱を取り出してテーブルの上に静かに置いた。

「何も無かったら受け取って貰えるか判らないが、これを渡しに律子のところに向かっていたよ…」

「今、それは受け取れないのかな…?私は、すぐにでも桐人に嵌めて貰いたいな!…」
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