二十年後のクリスマスイブ

　それが何であるか、そして、雰囲気を察した律子も立ち上がると、両手で茫然となっている桐人の肩を掴み何度も揺さぶっても、桐人の身体は魂が抜けた人形になっていた。

「お願い！桐人………」
　律子は今迄に見せた事の無い取り乱しを見せた後、桐人の胸に顔を押し付けて思い切り泣いた。
「これは宿命だよ。俺はそう思う…変えようにも俺に対しての試練は始まっていたんだ…」

　桐人は、暫く泣かせて少しは落ち着いた律子の身体を愛おしく離し、腰掛けさせながら言った。

「何がいけなかったの？…私のせい？」

「今から話すから落ち着いて聞いて欲しい…」

　桐人は、律子と別れてからの自身の今迄を包み隠す事無く話し始めた。

「…俺には、律子が全てだったんだよ…律子が居たから男として大きく成長させて貰えたんだ。それも、あくまで二人で居たからだよ。それは離れてから良く判った。実際に生への執着すら亡くす程にね…脆いものだよ。　一人ぼっちになった俺は、水も食べ物も求めなかった。確実に衰弱して来てるのは解っていながらも律子との想い出を浮かべているだけで微笑みを残し、この世から消えてたんだよ。悔いは無かった…それだけ一緒に居て幸せだったんだ」