二十年後のクリスマスイブ

　真由美の最後の言葉が終えた時、息も絶えていた。

　拓真は死の直前の母の言葉を脳裏に焼き付けていて今も、その時の情景を想い出して深く眉間にシワを寄せた。


「父は、その翌日に驚く事に髪の毛が真っ白になっていました。凄く窶れ果てた表情に表には出さない悲しさを現す様に…母の死に際にも、まるで全てを判って居たかの様にベッドから離れた椅子に腰掛けたまま母への言葉も無かったのですが…」

「それだけ、幸せな家庭だったんだろうね…判る気がするよ。それて゛桐人…いや、お父さんは今、何をしているのかな？…」

「僕にも解りません？…高校を卒業するまて゛一緒に生活していたのですが卒業したら突然、身の回りを整理して僕に全財産を寄越したのです…自宅、車、貯金、全てをまとめて通帳で渡されたのには驚きました。恥ずかしい事に、僕は進路はまだ決まってなく父に『これを好きに使え…お前には、金を上手に使える人間になって欲しい。今の難しい世の中で、決して金と欲に溺れる事無く自身を見失わない様に…これで、お互い帰る場所は無くなったわけだ！。俺は身体一つでこれから生きてみたい…そうだ、今年のクリスマスイブに約束があったな。運があれば、そこで…』