二十年後のクリスマスイブ
「そう言われて此処に来たのです。父と別れた僕は日本を旅してました…この日に合わせる様に北から南、都会ばかりではなく田舎町を色々と独りで周りました…」

「寂しくは無かったかい?」

「知らない事、判らない事ばかりだから苦労と不安ばかりです…けど、この経験は机で勉強するより自身の為になっていると思います。父に教わった事の実習期間みたいな感じですね………。それより、父は身体一つで出たっきりで、携帯電話も持たずに今は何をしてるのですかね?…」

 心配からかカウンターの椅子を180度回し、新井に背中を向けながら昼間でも薄暗い景色を眺めながら話す拓真の姿は、まだ少し幼さを残して見えた。

「お父さんは、何をやっていても必ず来るよ…約束事を何より大切にする立派な人だよ。このクリスマスイブを待ちわびたのは、私達だけではないからね…」

「その人は、女性なのですか?…」

「その通りだよ…聞いていたかい?」

「いや…何も…父の元恋人なのかな…」

「その時は、そうだった…でも、お父さんは亡くなった君のお母さんと結婚したんだね…運命は今日と云う日に何をどうしたかったのか、答えは出るよ……」
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