二十年後のクリスマスイブ
 桐人の気持ちが揺れ始めた。決意と違う運命

 そして、それが又もクリスマスイブだった。

「俺に、どうしろと言うんだ!真由美…何故、今日迄、引っ張ったんだ?……やっと側に往けると思っていた矢先に…」

 台のハンドルを握る桐人の右手が震え始めた。 腕時計の針は18時を回っている。

「おばちゃんは、淋しくないの?独りで…」

「どうなんだろうね?家事を済ませ、する事がなくなると此処に来てると云う事は淋しいのかな少しは…」

 老婦も桐人の隣でハンドルを持ち銀玉を飛ばし始めながら答えた。

「そうなんだ…変な事、聞いて御免なさい…」

「貴方は待つ人居ないの?…」

「………」

「クリスマスイブの夜にパチンコなんて、金の亡者か淋しい人しか居ないんじゃないのかな…待っている人を困らせたら駄目よ…」

 老婦の言葉で桐人はハンドルからゆっくりと手を離した。 何やら桐人の台が騒がしくなっている。

「おばちゃん!この台に座って…」

 桐人が微笑んで重かった腰をイスから離し立ち上がった。

「有難う…おばちゃん。クリスマスプレゼントだよ俺からの…行ってくるよ。待たせてる約束の場所に!」

「行ってらっしゃい…」
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