二十年後のクリスマスイブ
　不思議としか言い様がない出来事に新井と拓真は唖然となった。

「彼は、桐人の一人息子の拓真君ですよ」

「そうなのですか…桐ちゃんの息子さんですか、似ている筈だ…」

　新井に紹介された拓真は、訳が判らないが紳士に頭を下げた。

「末椅子拓真です。貴方は父を知っておられるのですか？」

「これは失礼した！私は天神慎平です。隣に居るのは娘のマリアです。しかし、此処で桐ちゃんの息子さんに逢うとは思わなかった。私は、お父さんとは、中学迄の同級生なんだよ。それで、今日お父さんは？……」

「拓真君も、待っているのですよ。桐人を…良かったらこちらに掛けませんか？」

　新井が天神親子をカウンターに誘うと二人は拓真の隣りに腰を下ろすと、親娘の品のある容姿に昔ながらの喫茶店のカウンターは不似合いだと拓真が思う位、二人には上品な雰囲気があり好感を拓真は持った。天神もマリアも黒を基調にした仕立ての良いフォーマルなスーツを着ていて今の日本には無いセンスを感じた。

「運命のクリスマスイブだな…」

　カウンターに並ぶ三人の前に煎れ立ての珈琲が置かれると、天神がポツリと呟いた。
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