可愛くねぇ

今日







どんな顔で営業部に入ろうかな?

朝からそんな事で悩む。



昨日は誰とも話さずに仕事を終えて帰っちゃったし。


朔とものんちゃんとも顔を合わせてない。


二人はもう付き合ったかな?


私は並ぶ二人を見て笑えるかな?


頑張れ私。


朔なんてもう諦めるんでしょ。

昨日、たっぷりと泣いたんだもん。


大丈夫...大丈夫。

私は笑える。


少し腫れた目に誰も気づかないでね?と思いながら営業部へ足を踏み入れた。



「おはよう」

とかけた声。


「「「おはよう」」」

とあちらこちらから帰ってくる。


うん、大丈夫、いつもと変わらない。



自分のデスクにつくと鞄をデスクに乗せた。


「おはよう、恵」

前の席に座るのんちゃんが挨拶してくれた。


「ん、おはよう、のんちゃん」

笑顔で返せた。


隣の席の朔がまだ居ない事にホッとする。

二人が一緒じゃなかったから、まだ心は落ち着いて居られるんだと思う。



「恵、昨日...」

のんちゃんが心配そうな顔でそう言いかけた時、営業部の入り口から声が聞こえた。


「おはよ」

聞き間違えるはずない、朔の声だ。


ドキッと跳ねた胸。


近づいてくる足音に尋常じゃないほど、手が震えてくる。



駄目だ、朔を見れない。

鞄を机の上に置いたまま俯いた。



ガタンと音がして、朔が隣のデスクに到着した事を知る。


「おはよう、希」

やっぱり付き合ったのかな?

のんちゃんに先に挨拶するなんて。


いつも、挨拶だけは私に一番先にしてくれてたのにね?

ズキズキと胸が痛む。



「メグ」

と掛けられた声にも


「何?」

俯いたまま愛想なく答えることしか出来なくて。


私にはもう構わないでよ。



「ちょっと来いよ」

その声と同時に捕まれた腕。


「えっ?」

驚いて顔を上げた先には真剣な顔をした朔が居て。


戸惑う私を無理矢理立たせると、ツカツカと歩いて営業部を出ようとする。



「な、なによ。今から仕事なのよ」

可愛いげなく朔の背中を睨む私を無視して朔はズンズンと歩いていく。









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