薬指の秘密
考え事をしてる間に着いたらしい

いそいそとシートベルトを外して車外に出る

コインパーキングの先の歩道は休日なだけあって人通りが多い

絶対はぐれる

「ねえ、海斗。結局どこ行くの」

お互いに長身だから見失うことはないけれど、たどり着くのは至難の業だ

しるふにしてみれば

「すぐそこの店」

言いながらコートの袖から出ているしるふの手を取る

すでに少しひんやりとしている

「しるふって末端冷え性だよな」

「そうなの。献血の時いつもホッカイロ握らされるの」

寒がりの割に海斗の手は温かい

海斗曰く、心が冷たいから、だそうだ

の割にははぐれないように、あるいはしるふの手が冷たいのを知っているからか

何も言わなくとも手を取ってくれる

ヒールを履いたしるふに歩調を合わせてくれているのも

出来るだけ人がいないところ歩いてくれていることも

実は知っている

だから、やっぱり海斗じゃないと夢はずっと夢のまま


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