薬指の秘密
「あ、あとそこの右の方。そこ少し飾り足りなくない?」

それとそこのサンタさんちょっと奥入り過ぎ

「……」

ゆっくりと視線を投げれば、いつもよりさらに低い位置からブラウンの瞳が見上げてくる

「立花」

「ん?」

「…自分でやれ」

「え、女の子をそんな高いところに上らせる気?」

このツリー何メートルあると思って

「別にこのまま終日ERを空けることになっても良いならとことんご希望に沿ってやるけど」

そうすれば困るのは、たぶんしるふたち

「…でも、そのサンタだけは直してよ。手伸ばせば届くでしょ」

びしっと指さされた先にあるそれに

「まったく。いつからそんなわがままに」

なんてつぶやきながら手を伸ばす

「何か言いました?黒崎先生ー」

下から聞こえる不機嫌そうな声なんて無視だ

「たちばなせんせい。いちゃつかないで」

仲裁に入った冷静な声は小児科で顔なじみの志保である
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