薬指の秘密
エピローグ

1

時間は流れ、時は2月

寒さと温かさが行ったり来たり

まだ春には少し遠いみたい



最近の一連の流れ

白衣を脱いで私服に着替えた後、首に付けていたリングを右手の薬指に通すこと

その、さも当たり前のように収まっている感じが、大好きだ

毎回独り微笑んでいるのは、内緒

「ねえ、ずっと言おうと思ってたんだけど。いいのつけてるわよね」

というように、いつも通りに着替えていると背後から莉彩が顔を覗かせた

「ん?つか、これ!しるふが欲しいって言ってたやつじゃないの!」

引き寄せたしるふの手から視線を移すとにっこりとほほ笑み返される

「あんたお店の前でため息ついてたじゃない。絶対海斗は買ってくれないよね、とか言って」

おねだりしたの?

「ある日突然買ってくれたんだー。あ、ちなみにね」

指から取って内側を見れば

「イニシャル入り」

「へー。黒崎先生って一般的な彼氏の感覚持ってたんだ」

意外って言うか、驚きって言うか
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