先輩、次こそ『壁ドン』やります! 【壁ドン企画】
◆ ◇

「お店よかったね。海鮮鍋、ウマかったあ」

飲み屋を出ると、先輩はよっぽど今日のメニューがお気に召したのか、狭い路地裏を歩きながら上機嫌に言う。

先輩が海鮮好きだって言ってたから、ネットの口コミで評判のよかったオトナの隠れ家的な店選んだけど。こんな喜んでくれるなんて、前からリサーチしまくった甲斐があってよかった。

心の中でガッツポーズを決めてると、千夏先輩は胸にグッとくるような笑顔で言ってくる。

「京くんって、いっつもイイお店探して予約しといてくれるし。ほんとマメっていうか気が利いてるよね。席もさ、必ず禁煙席選んで、空調当たり過ぎてないかとか毎回気にしてくれるし。すっごいやさしいよね」

好きな人からの褒め言葉に、心臓がぎゅっと痛いくらいに高鳴った。もしかして、このままサヨナラっていういつもの展開とは違うルートに行けるんじゃないかって。そう思ったのも束の間。


「ほんと、京くんのカノジョになる人は幸せ者だなぁ」


先輩がご機嫌にバッグを振り回しながら言った言葉は、淡い期待を抱きかけた俺のハートをあまりにあっけなく粉々にした。

今のは決定打だろ。俺のことまったく男として意識したことないからこそ、こんな残酷なこと言えんだろ。

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