『スキ』だと言って!


―――――ドンッ!!


私の無防備な腰を右手で抱き寄せ、

背中がついていた筈のドアに左手を着き、

乱暴に私の身体をドアに押し当てた。



まさに、形勢逆転。

一瞬の隙を衝かれてしまった私。

武術を志す者としては一生の不覚。


そんなありえない状況に硬直していると、


「俺の事、信じてないのか?」

「ふぇっ?」


斜め上20㎝の至近距離から、

物凄い色気のある視線が降り注ぐ。


思わず、視線を逸らすと……


「どこ見てんだよ、俺を見ろ」

「ッ?!」


腰を抱く腕に力が入り、ますます身体が密着する。


「俺は、大の女嫌いだ」

「……はい」

「そんな俺が他の女に色目を使うと思うか?」

「…………いえ」

「俺が希和以外の女を口説いてるのを見た事があるか?」

「…………ないです」

「俺がお前以外の女に一度でも触れた事があるか?」

「ッ!!……………ない……です」

「なら、解るだろ…………言わなくても」


理屈では解っている。

24時間ずっと一緒にいるようなものなのだから。

私が一番傍にいて、私以外を寄せ付けない。


だけど……―――………。


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