『スキ』だと言って!
「ったく!!………………俺の気も知らないで……」
「ふぇっ?!」
微かに聞こえる程度の声が耳に届いたと同時に、
「んッ?!!」
真っ直ぐ伸ばされていた彼の左腕がカクンと折れ、
ドアに肘を着く体勢に変った。
ますます身体が密着する。
彼のアルコールがかった吐息が頬にかかる。
ギュッと抱きしめられるよりドキドキする。
だって、彼の瞳がとても艶気を帯びているから……。
「きっ、………京夜様?」
「…………」
未知なる状況に恐怖の色が滲み始めると、
「式を挙げるまで……我慢しようと思ってたのに………希和が悪いんだからな」
「へっ?……んんッ?!!」
彼の言葉の意味を思い浮かべた次の瞬間、
彼の影が降って来て、強引に唇が塞がれた。
久しぶりに交わす深いキス。
『スキ』と言われるよりずっと満たされる。
意識が薄れ始めた頃、甘い余韻を残し唇が離れた。
すると、
「俺にとっての『女』はお前だけだ」
『スキ』よりももっともっと極上な甘い囁き。
俺様だけど無器用で口下手で女嫌いな彼が
私だけに見せる『男』の顔。
言葉よりも価値のある一番の安心剤だ。
~Fin~


