君とみた蒼空
数学の授業中。
「詩音ー。この問題、分かる?」
隣から、蒼くんが私の肩をつっつきながら言う。
「ここはね、これを……」
私が蒼くんに勉強を教えていると、前から歩実がちらっとこっちを向いて言う。
「詩音。蒼に教えてやんなくていいよ」
「歩実! 余計なこと言うな!」
蒼くんは勉強が苦手らしいけど、歩実はすごく頭がいい。
バレーボールも上手いらしく、運動神経も抜群の天才少女。
おまけに顔も可愛くて羨ましい。
いつもきれいに整えられたボブヘアに、大きくてぱっちりとした目。
すらりと長い手足。
歩実は、誰もが憧れる存在なんだ。
「詩音、蒼に教えてると詩音まで頭悪くなっちゃうよ」
歩実……。
そこまで言わなくても………。
「いいから、歩実は黙ってろよ」
すると、歩実ははぁーい、と可愛らしい声で返事をして前を向いた。
この二人のやりとりを見てると、こっちまで笑える。