サクラと密月
少し狭かったけど、綺麗にしてある車で二人で出かけた。
音楽は勿論ジャズだ。
何処か美味しい所知らないとハルが尋ねるので、蘭と一緒に良く行ったパスタのお店を
紹介した。
店に行く車の中も、アパートまでの間も二人でずっと話続けた。
お店に着いて、料理が運ばれてくるまでも、食べている間も。
まずはお互いの自己紹介から。
ハルはサックスが吹きたくて、高校を卒業したらバイトをしながら彼方此方の場所で
演奏をしているらしい。
その生活をもう三年も続けているんだって。
つまり、年下なのね。
通りでお肌が綺麗なんだ。
こうして近くで見ると、余計に実感する。
私はサックスという楽器を、あんまり目の前で見たことがない。
ハルにそう尋ねる。
どうしてサックス吹いているの、と。
「実家の隣にソプラノ歌手の先生が住んでいたんだ。庭で遊んでるとその家から音楽が
聴こえてきて、子供だから興味あるでしょ。子供だし、隣の家に遊びに行っちゃうよね。
そこにある時、サックス奏者の人が来ていてさ。」
やっぱり、音楽の話をする時のハルはすごく楽しそうだった。
運転手もついているから、ワインを飲んだ私は夢心地だ。
「その時彼が持っていたサックスが子供心に凄く格好良く見えたんだ、スゲーなんか
ヒーローが持っている武器みたいって。」
そう言ってにっこり笑う。
その笑顔、反則技。
何だかドキドキしてくる。
私もつられて笑う。
子供っぽい所も好感がもてた。
その笑顔を見て、彼が話を続けた。
そんな心配りができる所も、にくい。
「興味心身でその人から離れられなかった。興味あるし、触りたいし。そして始まった
演奏がまた凄くて。俺、それからサックスの虜。」
私は彼の話のほうが、興味津々だった。
そんな出会いがあったなんて羨ましい。
そう彼に話す。
彼は笑顔でありがとうと言った。