サクラと密月
「今日はこれからどうするんです?もしかしたらデートかな?」
彼のその優しさに少し甘えてしまう。
「実は約束してたんだけど、彼仕事で東京から帰ってこれなくなってしまったって、
さっきメールが来たんです。でも、なんだかそのまま帰ってしまうのもどうかと思って。
うろうろしてるだけです。でも、CD買ったから帰って家で聞こうかな。」
そう言って笑った。
しまった、泣きそう。
彼から顔を背ける。
この場をどうやって去ろうか考えていた。
なのに彼から出た言葉は、
「じゃ、俺とデートしましょう。今日車で来たんです。俺も特にする事ないし、
せっかく明日休みなんだから、遊びましょう。車こっちです。」
そう言っていたずらっぽく笑うと、背を向けて歩き出した。
その背中を見ながら独り心の中で呟いた。
あの、まだ行くとは言ってないですが。
心の中でもそう呟く自分と、ワクワクする自分が戦っている。
でも、一緒にいたい自分にかなわなかった。