サクラと密月
ミツツキ
暗い地下駐車場から、坂をあがって行くと栄の街中に車は出た。
セントラルパーク沿いの舗道を、人が沢山歩いていた。
和彦の車は三列シートの、車の天井が低いRV車。
エアコンを動かすよりも、外の空気が吸いたくて車の窓を開けた。
街のざわめきと排気ガスの匂い、誰かの笑い声が一緒に窓から入ってきた。
「まだこんなに人がいるんですね。金曜日だからかな。」
いつもと違う景色に驚く。
道路の此方側から見る世界だからだ。
信号で停止していたが、青に変わったので走りだした。
和彦が買ったばかりのCDをかけてくれた。
スピードが上がると、景色が流れだす。
緑とビルが交互に目の前を横切って行く。
二人きりだということも忘れて素直にドライブを楽しんでいた。
BGMも素敵だ。
車の運転にも合う。ベースの音が低く響いて、ドラムの音と一緒に疾走感のあるサウンド。
少しドキドキする。
実はとってもワクワクしてる。
「いいですね。音楽。ドライブに合ってる!」
彼はニッコリ笑った。そうだねの意味かな?
「何処に行きます?海、山?」
ウーン迷ってしまう。
後も先も考えたくない。
今この時を楽しんでいたいのだ。
「お任せします。どっちも良い!!」
「じゃ、両方行きますか。」そう言って彼はニヤリと笑った。
遊んでる、私で?
「じゃ、南に行きましょう。俺、海が見たい。」