サクラと密月
流石、私の嬉しいところをついてくる。
でも多分嫌な奴なら嫌味にしかとれない。
そして、そう笑う彼も悪くない。
「そう言って貰えると、嬉しいです。成績も
良かったし私もとても勉強になりました。」
素直な感想だった。
そう聞くと彼はまた嬉しそうに笑った。
その笑顔がまた素敵だった。
それからはお互いに知り合うのに時間はかからなかった。
時間がある時のメールのやり取りや、時間を見つけては
食事をしてお互いのことを話した。
彼の仕事の都合でどこかへ行って、会えない時彼がお土産を買って来てくれたり、
クリスマスに私がケーキを作ってお返ししたり。
小さなやり取りが思い出になって、半年ほどでお互いに友達を紹介したり、彼の飲み会に
ついてゆくようになった。
そうして私と彼の生活が混ざりあった時、彼に出会ってしまったのだった。
彼、和彦は恵介の後輩。
沢山の恵介の後輩の一人だった。
まだ会社に入りたての彼は、中途採用の営業マン。
恵介の仕事が決まった打ち上げをしている会に出た時、彼はそこにいた。
春にはまだ早い頃。
先週買ったばかりのクリーム色したトレンチコートで出掛けた。
場所は串ものを扱う居酒屋。
扉を開けると、炭で肉などを焼く煙が目にしみた。
ざわつく中を彼を探す。
ひときわ元気な集団があった。
その中に彼の姿が見えた。
大きな仕事の決定だったらしく、少し皆が興奮していた感じだった。
少し遅れて店に入ったので、特に気にとめられることもなく、良くきた!
という感じで席の隅にすわった。
主役はもちろん恵介だ。
何人かの人に囲まれた彼に近付くのは少し難しい感じだった。嬉しそうで良かった。
私は飲み物を注文して、食事に目をむけた。
その時声をかけてくれたのが、彼和彦だった。