サクラと密月
恵介の同僚さん、普段はこんなに話さない人なんだけど。
ああ、わかった。
和彦が上手に話をするのだ。
さすが営業マン。
ちゃんとお酒を注いたり、注文したり、私以外の隣の人と話をする。
しかも今気がついたのだか、声に張りがあって元気だ。
テンポも良いし、話も面白い。
なんか親しみやすい人なのだ。
いつしか私も意気投合し、一緒に笑っていた。
話はいつしか彼の学生時代の話になり、同世代なので大した話でもないのに、
盛り上がった。
でも、なんだか楽しい。
するする話す自分がいた。
横目で恵介を確認する。
恵介もまだ、誰かと話をしている。
この日の打ち上げは、とても盛り上がって二次会に行く話になった。
移動の時も彼を見るのだか、彼はまだ誰かと話をしていた。
どうしようか迷っていると、和彦と同僚さんが二次会に誘ってくれた。
いつもなら、恵介が間に入ってくれるのだか、今日はそうもいかないみたいだ。
困っていたのだか、そこまで和彦と同僚さんが連れて行ってくれるという。
私もとても楽しかったので、おじゃますることにした。
あの時帰っていたら、今頃どうなっていただろう。
良かったのか、悪かったのか今でもわからない。
二次会はカラオケに行った。
すでに皆出来上がっていたので、次々と寝てしまう人がでた。
同僚さんもその一人。
この頃になっても恵介は私のそばには来なかった。
こんなことは初めてだった。
しかも、今夜はずっとある特定の女性が恵介の横にいたのだ。何だかとても胸が
ざわついていた。
そのうえ、ボックスの中で初対面の人と二人きりになってしまった。二人の間には、
眠っている人がもう一人居るけど。
そんな思い、和彦に伝わったのかもしれない。
「おっ!俺、カラオケ久しぶりなんですよね。せっかく歌う人が減ったから好きな歌
歌おう!未羽さんもどうですか?」
今日一緒なのが、この人でなかでなかったら多分とても惨めになっていただろう。
そう言って、いたずらっぽく笑う彼に少し救われた。
そうだよね。楽しまなきゃ。
「俺、好きな歌あるんで入れちゃいます。」
そう言って彼が入れた歌が始まった。