「私は貴方のモノ」【完結】


「…多恵が、買われたって聞いてから…。
私、許せなくて、直接彬さんに言いに行ったんだ」

「…え」


それにタエは驚いた声を出す。



「最初はまだ猫かぶってたんだけどね。
どうにか多恵から彬さんを離せないかなってずっと考えてた」

「酷かったな、あのお前は」

「まあね。キャピキャピしてみたから」



にやっと笑う陽子に、舌打ちしたい衝動に駆られる。
タエの手前、それは止めておくが。


それから、陽子は今までの出来事を順を追って説明する。
葵とどうやって連絡を取り合ったとか、事細かにタエに話していた。


それに葵も頷きながら、付け加える様に口を開く。


「情報交換してた。そこで、多恵の家庭の事情を知った。
きっと、話そうとしてくれたのはこの事だよな?」



……話そうと?
タエがこいつに?



「本当によかった、多恵が無事で」

「……話は終わった?」



今すぐにこいつを帰したいんだが。
俺のタエを微笑みながら見ないで欲しい。
< 206 / 219 >

この作品をシェア

pagetop