「私は貴方のモノ」【完結】
「…多恵が、買われたって聞いてから…。
私、許せなくて、直接彬さんに言いに行ったんだ」
「…え」
それにタエは驚いた声を出す。
「最初はまだ猫かぶってたんだけどね。
どうにか多恵から彬さんを離せないかなってずっと考えてた」
「酷かったな、あのお前は」
「まあね。キャピキャピしてみたから」
にやっと笑う陽子に、舌打ちしたい衝動に駆られる。
タエの手前、それは止めておくが。
それから、陽子は今までの出来事を順を追って説明する。
葵とどうやって連絡を取り合ったとか、事細かにタエに話していた。
それに葵も頷きながら、付け加える様に口を開く。
「情報交換してた。そこで、多恵の家庭の事情を知った。
きっと、話そうとしてくれたのはこの事だよな?」
……話そうと?
タエがこいつに?
「本当によかった、多恵が無事で」
「……話は終わった?」
今すぐにこいつを帰したいんだが。
俺のタエを微笑みながら見ないで欲しい。