「私は貴方のモノ」【完結】
そんな俺に葵は困った様に笑うと続ける。
「待てって。なあ、多恵に両親の事ちゃんと伝えたのか?」
「……」
「その様子じゃ言ってないのか」
それに葵が肩を落とす。
あの時は話す必要なかったしな。別に。
「いなくなったのは、タエが家を出てすぐだ」
「そうなの!?」
驚いた声を出すタエ。
どうでもよかったから、俺もあの後どうしたとか聞いてなかったしな。
三本木に金を借りに行ったぐらいしか知らない。
「ああ。家に荷物を取りに行った時にはもう決めてたらしい」
「……そんな、早くから」
タエの表情がみるみるうちに曇って行く。
「……帰りたいか?」
そう、尋ねるとタエはバッと俺の顔を見ると笑った。
「私の帰る場所は、ここ」
「……」
「だから、会わない」
そうか。
タエはそう思ってくれるんだな。
タエの気持ちに俺の口角がゆっくりと上がって行く。
それから、二人に視線を移すと素っ気なく言った。