「私は貴方のモノ」【完結】
「んー?内緒ー」
そうやって、笑いながらタエに歌う様に急かすが、タエは顔を歪めながら言葉を詰まらせている。
タエは俺がこの曲を知ってる事に驚いてるんだろうな。
「……これをライブで初めて聞いた時。
余りにも楽しそうに歌ってるから…ぐちゃぐちゃにしたかった」
メロディーを奏でながら、俺はそう言った。
あの日。黒い感情が沸々と心の奥底から湧き上がって来たんだ。
「思えば、あの時にはもう俺はタエが欲しかったのかもしれない」
「……そ、んな」
「信じらんない?だよな。俺も信じらんない」
今でも、信じられないんだよ。
タエを好きでいる事が。
そして、タエが俺を好きでいてくれる事が。
目に一杯涙を溜めて、タエは唇を噛んでいた。
どうにか、涙を溢さない様にと我慢している。
何で我慢してんだよ。泣いてもいいのに。
その様子が可愛くて、俺はクスクスと笑った。
俺が頬に手をあてると、やっと涙がぽろっと伝った。
それを優しく拭う。
「最初から、俺とタエは惹かれ合う運命だったって事」
じっと涙目で俺を見つめるタエに顔を近付けると、ちゅっとキスをする。