あなたと、恋がしたい 【特別番外編】
「結婚式の本番は介添人が着せてくれるんですよね。でも、こんなふうに好きな人がデザインしてくれたドレスを着せてもらえるのいいな」
果歩は鏡に映るドレス姿の自分を眺めながら、ぽつりと言った。
「本番って、まだプロポーズしてねーぞ」
プロポーズという言葉に反応してドキンと鼓動が跳ねる。
空港から去ったあとに大切にもっていた指輪は……まだ一度も填めていない。いつか彼に填めてほしかったから。
「あ、べつに、催促してるとかじゃ」
あたふたと果歩が顔を赤くしていると、なんだか昂生の方もきまり悪かったみたいだ。
「あー……墓穴」
昂生は照れたように言って、果歩の左手をすっともちあげた。
「ずっと言うか言わないか悩んでたんだよな。日本を発つ前も」
「わかってます。誰より傍にいて、私のこと見ていてくれたなら……あえて言わなかったんでしょ」
「最近のおまえは俺をかいかぶりすぎだ。ただ言えなかったんだよ。照れくさくて」
ネックレスの指輪をさらりと搦めとり、彼の手のひらに転がり落ちてくる。
ドキドキ、ドキドキ、鼓動が速まる。
言ってほしいけど、言ってほしくないような、不思議な気持ちで。
(こういうときの神野さんの表情が好きだ。)
果歩は衝動的に両手を伸ばして昂生にしがみついた。驚いた彼が腰を支えてくれたまま、どさりと床になだれこむ。
「おい、おまえから押し倒してどうすんだ。ドレスがダメになるだろ」
昂生がやや不機嫌そうに呆れた顔をする。