潰れたリップクリーム。
『巧先輩、あたし1年遅れで絶対先輩が行く大学に行くから!』
『それすっげー嬉しい』
『だから1年待ってて』
『早く来いよ!待ってる!』
『うんっ』
あの頃願ったあたしの未来。
でもそんな未来はもうない。
先輩は新しい彼女と新しい未来を作る。
あたしが願った叶いそうにない未来ではなく、もう少しで実現しようとする未来。
「兄貴、もういい?」
「…優」
声の方に視線を向けるとドアにもたれかかってこちらを見てる長谷部。
「先生が早く鍵閉めろってうるせーんだよ」
「…わかった。凜、じゃあまたな。これ全部あげる」
先輩の言葉を返すことはしなかった。
あたしはただ机の上に置かれたたくさんのチロルチョコにしか視線を向けられなかった。
「優、先帰るわ」
「ん」
先輩が去った後、長谷部は自分の席の隣に立った。
「兄貴から聞いた?」
「…だからさっきあんなこと言ったの?」
「何を?」
「支えるからって…」
さっきは分からなかった言葉の意味が今は分かる。
「今だ好きな巧先輩に彼女ができたことにショックを受けるあたしを支えるからってことでしょ?」
「ご名答」
長谷部は拍手をすると席を立ちあたしをゆっくり抱きしめた。