君は僕を好きになる。

やっぱり、そういうことか……。

呆然自失で部屋に戻って、テーブルに社用携帯を置くと、休日にも拘わらず不在着信を知らせるランプが点いていた。

徐に開いた画面にあったその名前に、胸が軋む。


『もしもし、深山？』

「うん。ごめん、電話気付かなくて」

『……』

「相模？」

突然の沈黙。
そして、次の瞬間。


『どうした？』

彼からの思いがけない問いかけに、泣きそうになった。

だって、どうして声だけで分かるの？


「直哉、まだあの人と続いてた」

『……』

「相模の言う通りだった……っ」

恥ずかしげもなく泣きじゃくる私の声を、相模は何も言わず、時々優しい相槌を打って、いつまでも聞いていた。

そしてやっと泣き止んだ私に言ったんだ。


『俺にしとけば？』

「……」

『無理？』


無理、なんかじゃない。

――でも。


私は、二股をかけていた直哉を許せないのと同じくらい、自分の事が許せなかった。


「ごめん」

気付けば傍にいてくれた相模に惹かれていたなんて。

そんなやましい想いを、真っ直ぐな気持ちを向け続けてくれていた彼に言えるはずがない。


『……わかった。じゃー、また明日』

プツリと切れた携帯を握りしめたまま、座り込む私は何なんだろう。


彼氏の浮気よりも、相模の気持ちが離れていくことが、こんなに悲しいなんて。