君は僕を好きになる。
次の日、会社に行くと既に相模は外回りに出ていて、顔を合わせないまま始業になり、直哉は急な有給で休み。
あの人と過ごしているのかもしれないと思ったら、自分達の愚かさに笑いが込み上げた。
午後になると、上得意先の専務がアポなしでやって来て、その対応に上司数名と、帰社した相模が駆り出されることになった。
飲み物や軽食の準備を言い渡された秘書の春野さんと私は、給湯室と会議室を行ったり来たり。
慣れない仕事にてんてこ舞いの私とは対照的に、春野さんは流石という感じで、必要な物を凄いスピードで準備していく。
「そのメモにある飲み物、用意してもらっていい?」
「はーい! えっと、コーヒーが六つと梅こぶ茶?」
「それは先方の専務ね! あと、紅茶は相模君に」
梅こぶ茶のインパクトの強さに、聞き流しかけたけど――。
「相模、コーヒーじゃないの?」
「え? 相模君、コーヒー飲めないよ? だから、会議の時も紅茶か緑茶を出すの」
じゃー、いつも相模が私に差し出していたコーヒーは……?
「……っ」
会社じゃなかったら泣いていたかもしれない。
でも今は泣けないし、泣いている場合じゃない。