ベルリンの壁ドォォン‼︎
どこにもUSBなんか落ちてないよなぁ。

元彼と別れて2ヶ月が経過している。私はクッションの下や引き出しの中をくまなく探した。

壁越しには何の音も聞こえてこない。西田はちょうど外出中のようだ。

――ピンポーン。

インターホンの音が鳴るとともに、心臓が不安定なリズムを刻む。

「お前の部屋来るの久しぶりだなー」

そう言って、元彼は部屋へ上がってきた。

「一応私も探してみたんだけど、どこにもなくて」

「部屋、全然変わってないね」

テレビやパソコン、ベッドなど、彼は私のスペース内の物に次々と視線を移す。

空気の入った風船が、外側から指でぐにぐにと押されるかのよう。

「とりあえず、何か飲む?」

気まずい雰囲気を感じた私は、台所に向かおうとしたが――。

急に腕を引かれ、後ろから彼に抱きしめられた。

「……ちょっ」

「USB無くしたの嘘だし」

懐かしいシトラス系の香りに包まれ、つんと喉の奥が詰まった。

「やめてよ」

その腕を掴んで剥がそうとしても、彼は力を緩めてくれなかった。

「俺ら、やり直さない?」

耳元に温かい吐息がかかる。彼と付き合っていた頃の思い出が、一瞬だけ、私の頭の中をかすめた。
< 7 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop