遊川さんは今日も最強
「はい、お待ち」
「ありがと。親方」
遊川さんが店主から料理を受け取り、俺の前に並べてくれる。出てくる料理は海鮮が主で、どれも日本酒にあうような少し塩気の強いものだ。
アルコール度は強いはずなのに飲みくちの良い酒が、するすると喉を通って行く。
と、入り口が開き、冷たい風が入り込む。と同時に背中に声がかけられた。
「お、遊川じゃないか。珍しいな。一人じゃないのか」
後ろを向くと、四十代くらいのおしゃれにスーツを着崩した男性が立っていた。
角ばった顎で全体的に彫りの深い顔だ。
一見こざっぱりしたダークブラウンの髪が軽そうにも見える彼の印象を引き締める。
というか、この人見たことある気がする。
「あら、三上さん。お疲れ様です」
遊川さんの声に合わせて、俺も軽く黙礼した。
「後輩か?」
「ええ、『ハートフルソーイング』編集部期待の網目くんです」
「ほお。俺は『JACK』編集部の三上だ。よろしくな」
「よろしくお願いします」
『JACK』といえば、四十代からのちょいワル親父をターゲットにした、『EAST WEST』に続くうちの人気雑誌じゃないか。
「俺も一人なんだ。混ぜろよ」
三上さんはそう言って俺とは反対側の遊川さんの隣に座る。
いやこっちは二人ですけど。
邪魔しちゃ悪いって思ってくださいよ。