遊川さんは今日も最強

「三上さんはね、私が『EAST WEST』にいた時の上司だったのよ。今は『JACK』の編集長」

「男の人でも女性誌やるんですね」


間の抜けた返答をしたら、遊川さんがいきなり大声で笑い出して俺の背中を叩いた。


「網目、自分のこと分かってる? アンタのほうが珍しいから。男で手芸雑誌!」

「いやいや。そういうとこに配属されてる男は期待されてるんだぜー? 俺が見本じゃん? なあ」

「はいはい。三上さんはいつも自信家ですね」


軽くあしらう遊川さんに、おどけてみせる三上さん。
なんかこの二人仲良くないか?

落ち着け、俺。
三上さんはおっさんだよ。きっと既婚者だ。

それに遊川さんは俺のこと……好きなはず。
きっと、おそらく、……微かな希望に縋っていいなら。

俺が悶々としている間に、二人は俺のよく分からない話題に移行してしまっていた。

肩を並べながら、酒を酌み交わす二人は慣れた様子で、きっとこの店で何度もかち合うことがあったんだろうなと思わせる。


「ん? 網目飲んでないじゃん。ほらほら、これ食べなさい。美味しいよ」

「あ、ありがとうございます」


しかも遊川さんに気を使わせてる。いかん、勝手な妄想ばかりしてちゃダメだ。
まずはこの三上さんという人を観察せねば。

じっと見つめると、三上さんは俺の視線に気づいたのか口の端をあげる。
目尻のシワが濃くなって渋みが増す。

俺は思わず唾を飲んだ。

まさにチョイ悪親父……!
ヤバイ、どうする、格好いい。

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