遊川さんは今日も最強


 トントントン。小さく規則的に響く音に意識が浮上する。

目を開けると、飛び込んでくるのはオレンジ色の傘のついた蛍光灯。
八畳ほどの部屋は、小さなデスクと書棚、テレビ、そして俺が寝ているベッドで構成されている。昨日は余裕が無くて分からなかったが、布団からはすごくいい匂いがする。

 
「俺……」


昨日の出来事を反芻しながら、自分の格好をチェックするとTシャツとトランクスだけの格好になっている。
思わず布団を握りしめた。

え、マジ?
俺脱がされてますけど。

ここはおそらく遊川さんの部屋。……ってことは遊川さんが脱がした? 

見渡せば、俺のスラックスとジャケットとYシャツはきちんとハンガーにかけられている。


一気に血が下がってくる。

お、俺は何をした? 
脱がされた? 脱がした?

思わず自分の下半身を確認。朝だから元気過ぎてヤバイ。

妄想が止まらなくて頭を抱えていると、包丁の音が止み、遊川さんの声がした。


「網目、起きた?」


一枚扉を隔てたところが小さなキッチンになっているようで、開けた途端に食欲をそそる匂いが漂ってくる。


「ゆ、遊川さん……」


俺は思わず胸の前を手で抑える。……って、別にTシャツ着てるから! 
つか、女じゃないんだから見られたっていいんだよ、別に。

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