誘わないで
 
 お盆を棚に戻してポットに目をやるとだいぶ湯量が減っているが、自分が飲む分くらいは残っているだろう。

 ここへ来る時に持って来ておいたタンブラーの中にお気に入りの紅茶のティーバッグを入れて、お湯を注ぐ。

 壁に掛けられた時計に視線をやってから、コーヒーメーカー用の大きな計量カップでポットに水を足した。

 シュワシュワとお湯の沸く音。

 カチカチと秒針の音。

 どこからか聞こえる小さな話し声。

 同じ社内とは思えないゆったりとした空気感に心が和み始めていたその時──
 
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