誘わないで
 
「──サボってんの?」

「うわっ!」


 突然響いた低音に、茉莉の肩が大きく跳ね上がった。

 茉莉は睨み付けるようにして給湯室の入り口を見遣ると、良く見知った顔がニヤニヤと意地の悪い顔でこちらを見ている。


「違うから! てゆーか、なんでいるの? 営業って暇なの? 部外者なんだからこんな所来ないでよ」

「いや、俺もここの社員だし。勤務地違うからって差別すんな」

「てゆーか、何しに来たの」

「お前、"てゆーか"多すぎ」


 ああ言えばこう言う、一触即発とまではいかないが、給湯室の入り口に立つ童顔な男──立花晃(たちばなあきら)が、茉莉は少し苦手だった。

 茉莉より2歳年下の晃とは幼馴染。

 小さい頃から見知った彼と、まさか同じ会社に就職するとは思わなかった。

 2人とも地元愛が強いのだ、なんて言えれば少しは笑い話にでもなってくれるだろうか。
 
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