キスしなかったのは……
グラリと体が揺れて、壁際に押し付けられた。


ドンっと壁に手をつきあたしの顔を見つめる課長。




鋭い視線に、ビクンと萎縮すると同時に、ドキンと胸がなる。



おかしなもので、さっき別の男にされた時には嫌悪感しか沸かなかったのに、今こうして課長に閉じ込められると、ドキドキして、胸がキューっとなる。





「今日は別の男の腕で乱れるつもりだった?」



「そんな……」



「あのまま俺が通りかからなかったら、今頃どうなってたと思う?」


「……」




無言を肯定と取り呆れたのか、ため息をひとつ漏らした課長。


その顔が、さっきよりもグッと近づいてくる。





ダメだ……泣きそう。



この1週間で、あたしの中の課長への気持ちは、もて余すほど膨らみ続けている。




好きな人にそんな風に誤解されるのは悔しいし、悲しい。






「違います。あの夜のことは、課長にとってはちょっとしたイタズラなのかもしれないけど、


あたしは、課長だったから……」



「……」




「誰にも言いません。でも、それだけは誤解しないで下さい」
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