鈴が咲く【前編】
『鈴。
其方は我ノ手札だと敵に思わセル。
ギリギリまで姿ヲ向こウニ見せルな。』
「了解」
戦闘開始から、五分強。
絶えず脳内に入ってくるキュウビと怜芽の情報を聞きながら、
戦闘地域に足を踏み入れた。
里の入口を中心に、
半円を描くような形で陣をとる一族のみんな。
入口を背にする形で楕円のように陣を引く聖林。
その中心は先程まで竜巻が起こっていた場所なのだろう。
その後が土に残っていた。
燈兜が、孤の真ん中からゆっくりと歩いて姿を見せると
ザワッと空気が逆立つ音が聞こえた気がした。
「燈兜…!!!」
一触即発だった空気が、
聖林側で動いた。
今にも飛び込んできそうな者が何人か…
『何を驚イテおるノだ?
コちらにシテみれバ勝手に押し寄セて来らレタ挙句
此処の当主デアる我ノ存在に驚かレルなんゾ想定外ナノだが…』
低く深く、通る声。
それはこの場に不釣り合いな程に軽く、
…まるで冗談をいうかのように。
ナワバリ
『…我らノ居場所を荒らしたと、
其方等を殲滅シテも誰モ文句は言うマイな?』
ドスの効いた低い低い声に、
聖林の者が一歩後ずさる音と気配がした。