素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~
「おはようございます」

「おはようー」


軽く挨拶をしながらデスクに向かいすぐパソコンを付ける。

結局、遅くまで作成していた企画書は完成させることが出来なかった。
睡眠という欲に負けて寝てしまったのだ。
でも、あと少しで終わるからいいか。


「ちょっとみんな来てくれ」


キーボードに手を伸ばそうとした時に部長から呼び出しがかかる。
また説教からだろうか?
でも全員を呼び出すという事は違うはず。
なんせ部長が説教する相手は私だけだからだ。


「みんな、おはよう」

「おはようございます」


いたって平凡な挨拶をした私たちはある事に気が付く。
部長の隣に誰か立っている。
私より年上なのは確かだろう。
……でもどこかで見た事ある気が……。


「今日からこの商品企画開発部の部長に就任する事になった、橘 慎吾(たちばな しんご)君だ」

「橘だ、よろしく」


目の前に立つ橘さんは、フレームのない眼鏡越しに見える切れ長の目。筋が通った鼻、形の良い唇。
それを際立てる漆黒の髪色。
一般的に女受けしそうな格好良い顔つきだ。
しかも、身長も高い……パット見185は超えてるな。

……って言うか……。


「部長!?」


思わず叫ぶ私。


だって部長はもういるじゃん!
目の前に立っている白髪交じりの男を見ていれば呆れたような顔で見られる。


「泰東……この前話しただろ?
俺は販売部に移動になったって」


そんな話あったっけ?


周りの仲間を見れば私同様に首を傾げている。
……部長それ初耳ですよ。
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