悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
柳のことはあっさりと頭の片隅に追いやられ、沈んだ気持ちのまま二日が経った。
春休みはすぐそこまで来ているけど、こんな状態のまま突入するのも嫌だな……。
そんなことを考えながら、化学の授業のため実験室に入ると、薬品の独特な匂いが鼻につく。
一つため息を漏らした時、背にしていた実験室の扉がバーンと勢い良く開かれ、あたしは教科書やペンケース共々吹っ飛ばされた。
「ぎゃっ!? いったー!」
「あら、ゴメンナサイ」
白々しく謝るのは、忌まわしきリカお嬢様だ。
彼女のこの単純明快な悪意は、陰湿な嫌がらせとはやっぱりどこか違う。
今は清々しささえ感じるよ……。
どうやらチャックが開いていたらしいペンケースから、ペンが飛び出て散らばってしまった。
リカを一瞥した後、膝をついたままそれを拾うあたしを、亜美も手伝ってくれる。
「ひよちゃん、大丈夫?」
「へ、へーき……」
「言っておくけど、今のはわざとじゃないわよ。そんなとこでぼーっとしてるひよりが悪いの」
やっぱりムカつくー!!
腕を組んで上から見下ろすリカは、お嬢様じゃなくて女王様でしょ、絶対。