悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
ぽかんとするあたしを見下ろして、柳が一言。


「バレたくなきゃ、キョロキョロしないで俺について来いよ」

「……わかってる」


なんかちょっと俺様っぽい言い方が気に入らないけど……

何も言わずにあたしの荷物を持って歩き出す彼に、ほんの少しだけときめいてしまったのは事実。


昔はあたしの物を奪って困らせるだけだったのに、同じ行動でも今は思いやりを感じるなんて。

成長した……ってことなのかな。



少しほっこりした気分で、言われた通り柳の後ろについて御坂高校の門をくぐった。

軽音部の活動場所は視聴覚室で、いくつかあるバンドごと毎日ローテーションで使っているらしい。

そこを目指して歩いているのだけど、やっぱり周りの視線があたしに向けられているような……。


キョロキョロするなとは言われたけど、ひそひそと何かを話しながら、女子が怪訝そうにこっちを見ているのが気になって仕方ない。

絶対あたしが他校生だってバレてるよね?

ていうか、彼女達はきっと……


「柳のファン……だよね、やっぱり」

「あ?」


ぼそっと呟いた声が聞こえたらしく、柳が振り返った。

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