好きになんてならない!!
そう思ってしまったら、あの担当医の本性を暴く事だけを考えるようになっていた。
三神先生を目で追っては、カーテン越しに聞こえる、患者さんとの会話にも、耳をすませるようになっていた。
そんなある日の夜。
ふと、聞こえてきた声に私は目を覚ました。
『三神先生、ありがとうね。先生が教えてくれた満開の花壇。今日やっとに見に行けました』
『そうですか、それは、良かったです』
斜め前の、車椅子のおばあさんだ。
何だか凄く嬉しそうな声をしている。
そして、心なしか三神先生の声も……。
『先生のお陰で、私も頑張ればまだ歩けるんだって、実感出来ました。時間は随分かかってしまったけど、自分の脚で見た満開の花壇は、何とも言えない美しさだったわ……』
『それは、吉野さんご自身の力で頑張ったからですよ』
――ずっと、三神先生を見てきてわかった事がある。
確かに、他の先生とは違って、優しく声をかけたり、微笑んだりする事はないけれど……
だけど、患者さんを甘やかさない、冷静なその姿勢は、全部、患者さんを想っての、彼なりの優しさなんだと……。
シャッ……
「わ!!な、何?!」
「……起きていたのか?就寝中の血圧」
「え?あ、さようでございますか……」
いきなりカーテンが開いたから、思わず声が出てしまった。
ゆっくり上体を起こすと、私の反応を不審にも思わず、三神先生は私の腕に血圧計を巻くと、聴診器を耳にはめ、眉間にシワを寄せる。
私の音を、真剣に聞こうとしている姿に、何だかドキドキと、鼓動が音をたて始める。
触れられた所から、熱を感じる。
どうしたんだろう、私。
このままじゃ、先生に聞こえてしまいそう。