一難去って、またイチナン?

背中を壁に押し当てられて、思わず息が詰まる。



「どうしたらわかるんだ? これ以上、何を言ったら俺のことを信じてくれる?」



青山主任が迫ってくる。
両手を抑えられて身動きできない私は、頭を左右に振るのが精一杯。



「青山主任、やめて!」



もうダメ!
覚悟を決めて、固く目を閉じた。



その瞬間、大きな音とともに壁に触れた背中から衝撃が伝わった。
思いきり壁を叩いたような音。



驚いた青山主任が、肩を揺らして後退る。
掴んでいた手がひらりと離れてく。



「誰かいるのか?」



頼りない声で呟いて、まじまじと壁を窺う。



隣の部屋は資料室。
きっと誰かが壁際の書棚にファイルを戻す時に、誤って音を立ててしまったのだろう。



予想外の助け舟に感謝しつつ、私は床に散らばった資料をかき集めて会議室を出た。






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