真夜中のパレード

心から彼に対する感謝の気持ちでいっぱいだった。


「本当にありがとうございます。

あの日母を看取ることが出来なかったら、
きっと一生後悔してました」


「いや、俺は何もしてないから。
無理するなよ」


「はい、ありがとうございます」



笑顔でそう言った透子の後ろ姿を、
上条はじっと眺める。


……少し、痩せただろうか。




おかしいと思う。


もしかしたら、ただ迷っているだけなのかもしれない。



それでも、一度感じた思いが消えることはなかった。


むしろ、考えるほど、深まるばかりで。



社内にいる間も、知らず知らずのうちに
七瀬透子を目で追っている自分に気づく。


そして、困惑した。


一体どうしたと言うのか。




自分の感情が、まるで理解出来なかった。

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