真夜中のパレード

透子は咄嗟に思い浮かんだ名前を言った。


「天音(あまね)!
私は、藤咲天音(ふじさきあまね)です!」


上条の顔に、ぱっと喜びの色がさす。



「そう、ですか」

「はい」

「天音さん」

「そうです!」


透子もにっこり笑う。
頬が引きつりそうになるのを必死に我慢する。



「珍しい名前ですね」

「そうでしょうか?」

「はい! あなたによく似あう、きれいな名前です」


あまりに率直な褒め言葉に、透子もつい本音が漏れる。


「……キャラが違う」

「えっ?」

「い、いえ。
ああああ、あの、想像と、違うなって!」


「そうですか? 天音さん……あ、天音さんと呼んでも?」

「はい、大丈夫ですよ」


「天音さんには、私はどんな風に見えましたか?」


透子は思ったそのままを口にした。


「あ、あの。てっきりもっと、怖い人だと思ったので」


というか、会社にいる時のあなたはもっと愛想が悪いので。
そんなことは思っても絶対言えないけれど。

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