真夜中のパレード
☆
彼が案内してくれたのは、雰囲気のいい和食の店だった。
店内は落ち着いた色合いで、ふすまで仕切られているので周囲を気にせず食事が出来そうだ。
接待なんかでよく使われていそうな店だ。
透子は座布団の上に座り、にっこりと微笑む。
「素敵なお店ですね」
上条はほっとしたようにメニューを差し出した。
「気に入っていただけたならよかったです。
適当に頼んでも大丈夫ですか?」
「はい」
「苦手な物はありますか?」
「いいえ、すごく辛いもの以外でしたら平気ですよ」
慣れた様子で店員に注文を終えた上条を見つめ、透子は笑顔で話しかけた。
「和食なんですね」
「苦手でしたか?」
小さく首をふり、にこりと首を傾ける。
「いいえ。なんだか上条さんらしい気がします」
そして、前に上条と一緒に昼食をとった時の出来事を思い出した。
仕事で外出した時など、何度か彼と外で食べたことはある。
その時は、確か天ぷら蕎麦を一緒に食べた。
いつも無口だけれど、蕎麦を食べる時は妙に幸せそうだったのが印象に残っていた。