真夜中のパレード


「天音さんは、どんなお仕事をされているんですか?」


話しかけられたのに気づき、はっと顔を上げる。


「仕事、ですか?」


透子が言いづらそうなのに気づいたのか、上条も緊張したように言葉をつまらせた。


「すみません、立ち入ったことを」

「いえ、全然だいじょうぶですよ?」


そして出てきた料理に箸をつけながら、少し考える。


うん。
会社員ではつまらない。


『天音』の仕事なら、一つしかない。


透子はだんだん、天音になりきるのが楽しくなってきている自分に気づいた。


「私はカフェで働いてるんです」

「そうなんですか」



「はい。Santanaっていうお店で、夜はバーになるんですけど。
とっても雰囲気のいいお店で、店員の方も皆さん優しくて、居心地がいいんです!」


「素敵ですね。ぜひ私も行ってみたいです」


透子はにこにこ笑いながら頷いた。


「はいっ、それなら上条さんも……!」


そこで上条が満面の笑みなのに気付き、言葉を濁す。


「かっ、上条さんも、機会があったら遊びにきてくださいね!」




――危ない。

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