足音


俯いていると、影がかかった。


「加世ちゃんじゃん」


そんな、望まない声が降りかかる。


「…」


複雑だった。



今私は恋をして、失恋をしたわけで。



目の前の男性は、私に好意をよせている。




「なにしてんの?」


ボタンの開いたシャツから、鎖骨がちらりと見える。

南より高い背に、威圧感を感じると同時に、違和感。



たぶん私がこの人に飛び込めば、きっと全部が大団円。



まあるくまあるく納まるの。


「…うぅ…」


ちら、と職員室に視線を寄せる。


きっと彼は今頃、先生から頼まれたプリントを持ち上げてることだろう。


重、とか呟いて。


私を振って傷つけたなんて気付かずに、いつも通りに。

そうして、職員室を出たあと私といつも通り歩いて教室まで帰るのだ。


そのあといつも通りに授業が始まる――



なんだか、嫌だった。

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