足音
「彼氏、できそうなんでしょ?」
「え…うん、まあ」
「稲毛を断る理由なんてなくない?それとも、他に目当てでも?」
「…ううん」
「自分に好意をもってもらってるだけで、感謝しなきゃ。ね」
じゃあ、と行って職員室へ入る。
がらがらという扉と共に変わった電球の明るさに、ため息をついた。
――わかってる。
イライラの理由なんて、そんなの。
――わかってる。
彼女の笑顔が凍りついたのも。
――わかってる。
たぶん、彼女が選ぶのは稲毛だと。
しかも、それを後押ししたのは俺なのだ。
彼女という犬に、昔から好意を抱いていた――俺、なのだ。