足音


この1週間、正直言って浮かれてた。


あの彼女が、クラスの中心で笑う彼女が。


自分を追っかけて、走って、調子を合わせて。


まるで犬のようについてくるのに。



意味のわからない行動でも、とにかく嬉しかった。



それは決して声に出さなかったけど、確かに幸せだった。


彼女が自分に好意を持ってるのでは、とか自惚れたりしてみたり。

クラスで人気者の彼女を独占できてる、とか特別感ににやけてみたり。


舞い上がっていた。


明らかに。



当然イラつきは、彼女の隣に立つのは俺じゃないという嫉妬。

稲毛という奴に、ムカついた。


きっと、彼女は言って欲しかったんだ。


『嫌ならちゃんと言え』

とか、そんな感じの言葉を。


だけど、俺は『付き合え』と言った。


それに衝撃を受けたのだ。



そして――彼女はきっと、稲毛を選ぶ。



理由なんて、わからない。


けど、きっと。

クラスで空気の俺よりずっとお似合いじゃないか。


だから、きっと。



きっと彼女は稲毛を選ぶ。
< 9 / 31 >

この作品をシェア

pagetop