「お前なんか嫌いだよ」
まあ、こういう日に限って二人っきりで残業、なんてはめになるのでして。
「瑞樹お先にー」
「えええ!ゆうちゃんも帰っちゃうのー!?」
「待ってあげたいけどこれから彼氏と会うからさ。んじゃあま、お疲れ」
悠々と帰路に着く最後の砦(友人)を、くそう彼氏持ちはこれだから、とぶつくさ文句を言いながら恨めしげに前方に見える夏樹主任をちらりと見上げる。
カタカタとキーボードを打つ姿は、仕事のときだけかける眼鏡姿も相まってなかなかオトナの色気がある。
今週は母親が金曜にこちらに来ることもあってその日に有給を取ったのだけど、やっぱり前倒しの仕事は骨が折れる。
そういう理由で午後8時を回った今も私はパソコンとにらめっこしているわけだけど、夏樹主任はなんで残業してるのかな。
いまは急ぎの仕事もないはずだけど、主任という立場上いろいろ上司に仕事押し付けられてんのかなあ。
ご苦労なことで、と思った後、ちょうど区切りがついたのでうーんと伸びをして席を立つ。