先生の手が触れる時

「…先生…先生は…まだ凪のこと…」
「深山」

先生の強い声にその先の言葉は喉に留まる

「…でも、凪はっ……」
「………分かってるよ。あの子が、一番辛いことも…俺と別れた理由が…あの子が話した理由じゃないことも…分かるよ」

先生は頭をかいて、はー…と息を吐き出した

「……あの子は…嘘が下手くそだからな……」

そんな先生を見て、やっぱり
どうしてこの二人は離れなくちゃいけなかったんだろうって思った

「…先生…凪を助けて……今、凪、私の家にいるの」

先生が目を見開くのが分かる

「……どうして…」
「………詳しくは…凪が言わなきゃいけないと思う……でも、お願い…あの子…いつか絶対壊れちゃう」

そう呟くと、先生は立ち上がる

「………早くしないと…晴夏にとられちゃうよ」

そうにやりと笑うと先生は苦笑いをこぼす

「……渡すかよ……アイツなんかに…」

そう呟いた先生の顔を見て、私は心のなかで、凪が見てるのは先生だけだけど、と呟いたのは内緒だ。

凪、あなたが幸せになるなら
先生でも晴夏でもどちらを選んでもいい。

でも自分を犠牲にはしないで

お願い


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